世界中でインタラクティブなアート展覧会を行うチームラボ。
そこでカタリストを担当しているGHANIさんにPodcastのゲストとしてお越しいただき、チームラボのサステナブルな取り組みやGHANIさん自身のチャレンジなどについてお話をうかがいました。
GHANI(竹内 正人)プロフィール
チームラボのカタリスト。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻卒業後チームラボのメンバーに。現在は、プロダクトと展示作品とグッズを担当している。
Instagram:https://www.instagram.com/ghani.teamlab/
今井みさこ(以下・み):「今回はチームラボのカタリストGHANI(竹内 正人)さんをゲストにお招きして、お話していきます。」
GHANI(以下・ガ):「はじめまして。チームラボのカタリストGHANIです。チームラボのメンバーになって7年目になります。現在は、プロダクトと展示作品とグッズの担当をしています。よろしくお願いします。」
み:「今回チームラボが実践しているサステナビリティやGHANIさん自身の活動についてお話を伺います。まずは、わたしたちの出会いから。出会いはもう7年前になりますよね。わたしが星海社に勤めていたときに出会っていますよね。」
ガ:「そうですね。僕がチームラボに入ったばかりのときですよね。」
み:「それから、友だちとして遊んでいましたよね。今回のインタビューのきっかけは、サンフランシスコのアジア美術館でチームラボの展覧会が開催されていたことです。
この展覧会をきっかけにGHANIさんと近況報告をしあい、今回のインタビューにつながりました。わたしチームラボの活動も作品も大好きで、6年前に開催されたラスベガス・ベラージオの噴水の作品とパロアルトで開催した展覧会にわざわざ見に行ったくらいです。そして今回の展覧会を見に行って、チームラボの成長の凄まじさをアメリカにいても感じました。これからお話できるのが楽しみです!」
ガ:「ありがとうございます。いろいろ聞いてください!」
※パロアルトでの展覧会場にて撮影
チームラボとカタリストになるまで
み:「まずは、チームラボを知らない人もいるかもしれないので、チームラボについて教えて下さい。」
ガ:「チームラボは、集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジー、そして自然界の交差点を模索している国際的なアート集団です。アーティスト・プログラマ・エンジニアCGアニメーター・数学者・建築家など、様々な分野のスペシャリストから構成されています。つまり、モノづくりが大好きなメンバーで構成されています。チームラボといえば、デジタルテクノロジーによるアートの印象が強いと思うのですが、他にもさまざまなお仕事をしています。」
み:「アート作品の展示に限らず、ウェブやアプリ、グッズなども制作しているんですよね?」
ガ:「デジタルテクノロジーを活用していろんなものを作っています。」
み:「チームラボは様々な分野のスペシャリストから構成されているというお話がありましたが、GHANIさんはカタリストという役職ですよね。カタリストってどういうお仕事をしているんですか?」
ガ:「英語で”触媒”という意味なんです。科学用語でいうと、”促進剤”なんです。チームラボは、ディレクターとかプロデューサーなどのピラミッド式の組織構造ではなく、フラットにいろんなチームに関わっています。カタリストは、”触媒”の役割でンジニアたちの間に入ったり、クライアントとのコミュニケーションに入ったりなど。物語を促進させる役割です。例えば、スケジュールの管理、マネージメント、作品のコンテンツを考えたりしています。カタリストのバックグラウンドは理系・文系・建築系などさまざまです。」
み:「GHANIさんのバックグラウンドは、アートと建築ですよね。GHANIさんについてお話を伺いたいのですが、アートとの出会いはいつだったんですか?」
ガ:「そういう話をするのは、初めてですね。アートやモノづくりに対する関心はうまれたときからあったかもしれないです。祖父が家具屋さんをやっていて、モノづくりをする姿をみていました。また、小学生のときにアメリカや南アフリカに住んでいて、世界中の美術館に連れて行ってもらいました。そういった経験が、自分の中にあります。中高学生のときは進学校だったというのもあり、アートとは距離がありました。高校3年生のときにアートディレクターの佐藤可士和さんの特集がテレビであり、衝撃を受けました。
それから、そのワクワクした気持ちに素直に進みたいと思い一浪をして、建築・美術の大学に進学しました。」
み:「そうなんですね!高校3年生で進路変更を決めるって当時のGHANIさんにとって大きな決断だったと想像できます。」
ガ:「そうですね。理系の進学コースで勉強をしていたけれど、なんの夢があるのかわからなくて、ワクワクしなかったんです。無理やり決めようとしていたけど、卒業のギリギリになってデザインや美術に出会ったんです。本屋さんで美術の本を手に取るだけでもワクワクした。自分が好きなものをやっと見つけた気がしました。大学では建築学科の中でも、おもしろい学科に入りました。当時の先生が、メディア・アートに興味があって、メディア・アートと建築を横断した授業があったんです。
1年かけて学年関係なくチームを組んで、研究費用を使って、モノづくりをする。夏休みも冬休みも潰してモノづくりに集中できる環境なんです。いわゆる、今チームラボで働いているカタリストみたいなことをする最初のステップでした。」
み:「それが楽しかったんですね!」
ガ:「そうなんです!そして、4年生のときに初めてチームラボに出会ったんです。きっかけは、僕たちとチームラボが展示をしていた会場が一緒で、隣がチームラボだったんです。その時印象的だったのは、オトナたちが昼夜問わずにみんなで議論をしたり笑ったり批判し合ったりしていて、チームラボ代表の猪子をはじめ、他メンバーもいて、その雰囲気がすごく良かったことです。」
み:「大学卒業後、東京芸術大学大学院に進学されていますよね。」
ガ:「大学4年生のときに、チームラボへ入りたいなという気持ちと同時に、在学中はチームで作品をつくることが多かったので、個人でも作品をつくりたいと思うようになっていました。東京芸術大学の大学院は国内のトップレベルが集まる場所で自分はどんな作品をつくれるのか試してみたいという気持ちが強くなって、東京芸術大学大学院への進学を決めました。2年間でたくさんの学びを得ましたが、同時に自分の限界も知りました。2年で見切りをつけるのは早いかもしれないけど、それを感じてしまって。僕はチームでつくることのほうが向いているなと知ったんです。」
み:「そして、今こそ チームラボに入ろうと思った?」
ガ:「そうですね。そしてラッキーなことに、僕が大学院卒業のタイミングではじめてチームラボが新卒採用をしていたんです。もちろん応募して、今に至ります。」
み:「わたしたちが出会ったのは、GHANIさんがチームラボに入ったばかりのときでしたね。話していたら、わたしも猪子さんとのエピソードを思い出しました。
わたしが大学生のときに日本のポップカルチャーを紹介するフリーペーパーをつくっていて、猪子さんにインタビューがしたいと思い、猪子さんに企画書をお送りしたことがあったんです。そのときはスケジュールの関係で実現しなかったんですが、その後社会人になり猪子さんにお会いしたときに猪子さんがそのことを覚えてくださっていて「あのときは、インタビュー実現しなくてごめんね」って言ってくれたんです。すっごい感動したのを覚えています。」
人、作品の境界を無くすアート作品
み:「GHANIさんがチームラボに入社して7年。ワクワクすることを続けられていますか?」
ガ:「そうですね。先輩・後輩関係なくチームになっていろんなプロジェクトができています。現在、サンフランシスコで展覧会を行っていますが、これから海外でもっと展示の場所を増やしていきたいので、頑張りたいですね。作品をつくって文化背景や年齢などを超えて感動体験を届けられるのが、僕にとって喜びです。そういう場所・チームラボでいられて嬉しいです。」
み:「GHANIさんは海外に住んでいた経験もあるからこそ、文化背景や年齢を超えて同じ感動を提供することに強い想いがあると感じました。わたしもこのパンデミックの間にブラックライブスマター運動やストップアジアンヘイト運動をそばで見てきたから、文化背景を超えられるパワーは素敵だと感じています。
チームラボの展覧会に訪れて気づいたことは、おじいさんおばあさん、わたしみたいな家族連れ、インスタグラマーみたいな若いカップルなどほんとうにいろんな人が会場にいたこと。4年前のパロアルトの展覧会は、場所がシリコンバレーど真ん中というのもあってテック業界の若い人が多い印象でした。今回のサンフランシスコの展覧会は、チームラボが世界の人にどんどん知られていっているのを実感しました。」
※サンフランシスコアジア美術館での様子
み:「ところで、今回サンフランシスコでの展示内容はどのように決まったんですか?」
ガ:「各会場に合ったものを吟味しながら展示作品を考えています。チームラボの常設展としては、国内は東京・お台場のチームラボボーダレス・福岡のチームラボフォレストなど。海外は上海・マカオ・シンガポール・オランダ・サウジアラビアなども増えていく予定です。東京・上海・サンフランシスコのスケッチオーシャンという作品は、国境をボーダレスにしようという取り組みをしています。」
み:「サンフランシスコの展示でみました!魚の絵を描いてスキャンすると画面で魚が泳ぎだす作品ですよね。その中でFrom Tokyoの魚がありました!」
ガ:「そうそう、それです!チームラボは、作品の境目をなくす、”ボーダレス”というコンセプトで作品を作るのですが、今回は東京で描いた魚がサンフランシスコで泳ぐという国境がボーダレスな展示を試みています。」
み:「そういうのエモいですよね。わたしがサンフランシスコで描いた魚が東京でも泳ぐかもしれないと思って『サンフランシスコ みさみさ参上!』というメッセージを描きました笑」
ガ:「それはわかりやすいですね笑」
み:「ボーダレスって言葉はよくチームラボが使っていますよね。なぜなのでしょうか?」
ガ:「チームラボは、人間と自然が切り離せない関係にあると考えています。世界と人間との関わり合い、自然と人間との関わり合いというのにすごく興味があるんです。チームラボボーダレスという美術館は、自分と世界・自然との境界線をなくすことがテーマです。さまざまなテーマの作品が点在しているけれど、作品間の境界線はなくしています。例えば、とある作品のカラスが別の作品の中に入っていったりします。ひとつの作品で完結するのではなく、美術館全体を通していろんな作品が混ざり合い、しかも来場者の動きが影響して作品が常に変化していきます。人間・作品同士が一体になることがおもしろいと思っています。」
み:「このお話を聞いて、改めてチームラボが好きだなぁと感じました。サステナブルやZENを学ぶ中でわたしが気づいたことは、すべては関係しあっているということです。「地球を守ろう」というメッセージがあるけど、わたしも地球をつくっている構成員ということはわたしも地球だと思っていいじゃないですか。だから「自分に優しくすることが・ゴキゲンでいることが地球を守ることに繋がる」というふうに考えています。チームラボの作品にもそういうメッセージを感じました。」
アートを作るチャレンジ
み:「GHANIさんはこれまでさまざまなお仕事を担当なさってきたと思いますが、その中でも一番チャレンジだったものはなんですか?」
ガ:「チームラボに入って最初に関わったお台場の日本科学未来館での展覧会です。そこから1年はプロジェクションの作品に関わりましが、次第に”モノ”で作品をつくりたくなりました。当時新卒1年目でしたが、出張中にチームラボの代表・猪子に「モノを使った作品を作りたいです!」ということをお伝えしたんです。そしたら、「ランプに興味があるんだけど、一緒にやらないか?」と言ってもらえて、ランプの作品に関わることになりました。その時の高揚感が忘れられません。」
み:「そのランプの作品は、ディズニーアニメ作品『塔の上のラプンツェル』ともコラボしていましたよね。記者会見の様子をみました!」
ガ:「そうです。当時、日本で展示した際には多くの人に来場していただいてSNS上でもたくさんの写真があげてもらって嬉しかったですね。当初はフランスの4日間の展示のために制作した作品だったんです。その後、中国・深セン・お台場・御船山楽園ホテルに展示をしました。これらはただ移設しているわけではなくて、壁や床の素材調整を重ねて細かいアップデートを重ねていきました。その過程はとてもチャレンジだったと感じます。」
み:「海外でガラスの展示準備とか、大変そうですね。」
ガ:「そうですね。大変だったからこそ想い出深いですね。モノの美しさの集合体みたいな、チームラボが得意とする映像とさらにモノがもつエネルギーを使って作品をつくることでチームラボの作品が強固なものになると思っています。そして、チームラボがデザインしているのは空間であって、モノではないんです。空間を作るためにモノをどう使っていくかを考えるのはすごく自分に合っていることだと感じています。」
み:「おもしろい!」
チームラボのアートとサステナビリティ
ガ:「現在チームラボプラネッツで展示中の「Floating Flower Garden」は13,000株を超える生きたランで埋め尽くされた作品です。この作品は、人の動きにあわせてランが動きます。実はこの作品は2015年の日本科学未来館にも、展示していました。」
み:「2015年の日本科学未来館の展示に行っているので、その記憶があります!」
ガ:「その後、より長く作品を楽しめるようにランにとって心地良い環境条件をすごく勉強しました。もともとランのことを知らないので、専門家さんにもご協力いただき品種をはじめとして、作品として美しく見える色のバランスなどを検証・調整して今の展示があります。」
み:「お花も生きているので、検証と調整が大変そうですね。この作品ではサステナブルな取り組みをはじめたんですよね?」
ガ:「そうなんです!10月8日からチームラボプラネッツ(東京・豊洲)に、京都発の「Vegan Ramen UZU」と作品で使用したランを持ち帰ることができる花屋がオープンします。そこで展示したランを何回も洗って使えるショルダーバックにいれて販売します。そのショルダーバックには「FLOWERS GROWING BACK」意味:花は再び咲き戻るというメッセージをいれています。ランは、花が散った後も生き続け、何度も咲き、数十年と生きる場合もあります。それを家でも体験してほしいんです。」
み:「だから展示にランを選んでいるんですんね!」
ガ:「展示したランを家に持ち帰っていただいて、また楽しんでもらうコンセプトです。そしてさらに、そのショルダーバックをチームラボプラネッツに持ってきていただくと無料でランを差し上げます。」
み:「素敵です!サステナブル・持続可能な取り組みですね。ボーダレスっていうコンセプトにも通じる気がします。展示作品を家で楽しめる。チームラボと自分の生活の境界線がなくなりますね。」
ガ:「ショップのコンセプトがまさに『体験を持ち帰る』なんです。岡山にある福岡醤油ギャラリーでもチームラボの展示を行ってます。地下空間の水の上に無数のランプが浮いている作品でそこの場所の香りを閉じ込めたアロマキャンドルを販売しています。」
み:「素敵ですね。アフターコロナの今こそそういった体験が求められていますよね。わたし自身も、子どもの習い事がすべてオンラインになってやっと美術館などに行けるようになりました。今後、多くの人がそういう「体験」を求めていくと思います。」
ガ:「嬉しいです!」
み:「香りといえば、サンフランシスコのアジア美術館も香りを演出されていましたか?」
ガ:「作品に合わせた香りはチームラボ独自で制作しています!」
み:「香りって記憶に結びつきやすいですよね。元カレの香り〜とか思い出すことあるじゃないですか。チームラボの展示をみに彼氏と行ったな〜ってことを香りをきっかけに思い出す。それってすごいエモいですね。」
ガ:「エモいですね。」
ヴィーガンラーメン
み:「10月8日からチームラボプラネッツ(東京・豊洲)にオープンするヴィーガンラーメンについてもっとお伺いしたいです!」
ガ:「『Vegan Ramen UZU Kyoto』という、チームラボが空間設計とアートを担当し、アートを楽しみながらラーメンを食べられる場所が京都にあります。それがチームラボプラネッツでもオープンします。ヴィーガンというのは、完全菜食主義者ですよね。ラーメンは動物性の食品を使って作るのが主流ですが、このヴィーガンラーメンはそういった動物性のものを一切使用していません。チームラボプラネッツ限定のメニューも提供します。「ヴィーガンラーメン花」はチームラボプラネッツに展示している「Floating Flower Garden」から発想を得た一品です。」
み:「お写真みるとすごく豪華ですね!お花がたくさん盛り付けられていて美しいです。」
ガ:「あとは『ヴィーガンラーメン茶』やヴィーガンアイスクリームも限定メニューです。アート作品に包まれながら食べること・テイクアウトすることができます。ラーメンを食べることができる作品空間として新しく公開されたのが、「虚像反転無分別」という、チームラボが設立以来書き続けている空間に書く書「空書」による作品です。「書」は二次元の情報ですが、チームラボのデジタル技術で3次元の「書」を書いています。外の空間でも、「空と火のためのロングテーブル」の作品を楽しみながら食べることができます。」
ガ:「本当においしいヴィーガンラーメンなのでぜひ味わってほしいですね。」
み:「10月8日からチームラボプラネッツで食べられるということで、ぜひみなさんに行ってもらいたいですね。GHANIさんの思いを知ってから食べるヴィーガンラーメンはもっとおいしいはずです。」
ガ:「ぜひ!」
み:「素敵です♡」
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