2022年4月末、ゴキゲンらぼのサステナブルツアー@京都府亀岡市を開催しました。とても内容の濃いツアーとなった様子を連載形式でみなさまにお届けしたいと思います。
第一弾は、大阪商業大学公共学部公共学科の准教授として海洋プラスチック問題を研究されている減プラスティックのキーパーソンであり、ゴキゲンらぼのアドバイザーも務めてくださっている原田禎夫先生とご一緒した亀岡市役所でのインタビューの様子をお伝えします。
お話ししてくださったのは、全国初のプラスチック製レジ袋の提供禁止条例の制定に尽力され、使い捨てプラスチックごみゼロを目指す亀岡市の環境政策を担われている環境先進都市推進部長である山内剛さん。
一般廃棄物の適正処理や更なる資源化を推進するために亀岡版ゼロエミッションの策定に携わられている 環境先進都市推進部資源循環推進課長の大西光治さんです。 こちらの記事は、前編、後編でお届けしますね!とても興味深い対談の様子を余すところなくご紹介します!
*左:亀岡市の環境政策を担われている環境先進都市推進部長である山内剛さん
*右:亀岡版ゼロエミッションの策定に携わられている 環境先進都市推進部資源循環推進課長の大西光治さん
ゴキゲンらぼのシールを携帯に貼ってくださいました。
マイバッグを持ち歩くことが、ゴミを減らす大きな一歩に
原田さん(以下・原田):「保津川下りの船頭である豊田さんたちとNPOを作り、海ごみ、川ごみ問題を何とかしようと取り組み始めた時、亀岡市の計画の一番上位にある総合計画の策定の審議会にも委員として参加することになりました。 その中で「海のプラごみの問題を何とかしましょう」と議論しました。私はNPO代表という立場で、その時の担当係長が山内さんでしたね。最初は海ごみを亀岡市から無くしましょうって言っても、「亀岡で海ごみの話?」と、言われた側はちんぷんかんぷんだったんじゃないでしょうか?」
山内さん(以下・山内):「はい(笑)。はじめはどういう意味なのか、正直分かりませんでしたね」
原田:「そこから一緒に計画を作り、2011年から市の計画がスタートして具体的な取り組みが始まりました。もう11年になるのですね。
海外の取り組みを知ろうということでハワイにも一緒に調査へ行きました。現地視察をし、帰国後にプラスチック製レジ袋禁止を提案しようと話をしました。帰国後、僕はNPOの立場で亀岡市に提案をし、市長と議長が共にに、プラごみゼロ宣言をしていただきました。山内さんには事務方として、いろいろご苦労をおかけしました。もちろん一緒に条例案を作成しましたが、条例作りとなれば、僕達NPOの手を離れる話になりますから。議会で説明されたり、地域に説明されたり、とても大変だったんですよね」
大西さん(以下・大西):「前例がないことだったので大変でした。 市ではごみ処理基本計画(ごみを減らすとか、どうリサイクル・処理するかっていう計画)を5年ごとに作るんです。5年前に作った際、今だけじゃなく、将来の子供たちに負担にならないようにするにはどうすればよいのかを考えて計画を作ったんです。 そこを考えているときに、私と山内部長は、当時の所属の課は違いましたが一緒にやらせていただく流れになりました。廃棄物に詳しい方はご存じだと思いますが、プラスチック製レジ袋は軽くて丈夫で、ごみの重量としては少ないわけです。見方を変えると、優秀なモノなので、なぜ減らさなければならないのかという意見・疑問も結構あったんです。
僕たちはプラスチック製レジ袋だけを減らすことが目的ではなく、本当の目的は「レジ袋を禁止することによって、いかに無駄なもの(レジ袋)をちょっとした手間(マイバッグを持つ)をかけることによって、ごみが減る。この気づきのきっかけとして、呼びかけをしましたし、この考えを条例にしました。ごみが川にたくさん流れているという実態もありましたが、川のごみを減らしたいだけではないんです。子供達が大きくなったとき、環境や美しい自然が保たれていることを想像する意識を皆さんに持っていただきたいという思いが根底にありました」
木村まゆこ(以下・木村):「素晴らしいメッセージのもと、条例制定まで皆さんで歩まれていたことがイメージできました。みさこが住むサンフランシスコではプラスチックレジ袋はないと話していたよね?」
今井みさこ(以下・今井):「サンフランシスコはプラスチックゴミ袋が珍しいものです。今だとプラスチックレジ袋を購入するために1枚日本円で25円かかります。2022年1月に条例が変わり、再利用できればOK(128回使える耐久性があればOK)となり、とても分厚い感じのレジ袋が配布されるようになりました。基本的に無料配布はもう何十年も前からないと聞いています」
「使い捨て」と距離を置いたライフスタイルを提案する
山内:「日本には素晴らしいおもてなし文化がありますよね。だた、ものを渡す際に袋に入れて渡すこと、その全てがおもてなしだと思い込んでいるケースがあると思うんです。見方を変えると過剰包装だったりしますよね。
そこの意識を変えるために「”使い捨て”と距離を置きましょう!」というスタートをプラスチック製レジ袋に見い出したんです。なので、プラスチック製レジ袋が悪いとか憎くいということではないと伝えました。プラスチック製レジ袋はプラスチックごみに占める割合のたった2%であり、そんなに一生懸命やってどうするんだ!と言われたりもしました。しかし、そんなとこを狙っているんじゃないんですってことを伝えながら、進めていったんです」
原田:「思いを伝えていく中でも、お店の皆さんやコンビニさんの反応は厳しいものでしたね」
山内:「そうでしたね。各社説明会を開催したんですけど、皆さん、初めから対抗意識が強かったです。ただ、原田さんから「ここで妥協して弱いところからスタートするより、そこはしっかりと議論した方が良い」とアドバイスをいただき、安易に妥協せず、向き合いました。具体的には、国のようにバイオマス25%配合であれば大丈夫とか、厚みや取っ手がないモノはOKとか、そんなことは一切止めよう!と。プラスチックは全部NGという部分を譲らずに議論しましたが、その分しんどかったですね」
原田:「日本の行政では珍しい議論の仕方だったと思います。数値目標を掲げて、2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロを最終的なゴールにした。そこに向けて当初の予定では、全業種全店舗で2020年8月にプラスチック製レジ袋禁止というロードマップを決める。とても大変なんですけど、これで譲れるところと譲れないところが出てくるわけですよね。例えば、譲れるところは、時期は多少の調整ができることになりましたよね」
大西:「ただ、世間の流れの中に、プラスチック製レジ袋禁止については、目を向けなきゃいけないという事業者さんもあり、陰ながら賛成してくれる方もいました。ただ、条例によって、お客さんが来なくなることを一番心配されていましたね」
今井:「プラスチック製レジ袋禁止が、売上を左右するかもしれないという意見があったのですか?
山内:「お客さんが逃げるとか・売り上げが下がる・レジで揉め事になるとか、いろんな不安があったんです。それに、日本フランチャイズチェーン協会という全国のコンビニが加盟されている協会の本部に、亀岡市長、副市長、原田さん達と足を運び、プラスチック製レジ袋禁止をやらせてくれと言った時には、鼻であしらわれましたね」
原田:「ただ、このフランチャイズチェーン協会にマクドナルドも加入されているんです。当時の担当者も協会へ同席されていて、そのときの議論が解決の糸口の一つになったかもしれませんね。
亀岡市だけがプラスチック製レジ袋が提供禁止になって、亀岡にあるマクドナルドとしても条例は守らなければならない。2900店舗の中で唯一亀岡市だけプラスチック製の袋を無くして、紙袋でしかも有料になる。それに伴い、オペレーションも変わるということで、POSレジのシステム改修は全国で行わないといけない。だから少し時間をもらえないか、というお話でした。そんなふうに一つ一つの課題を共有して、解決策を一緒に考えていきました。マクドナルドも現在は、システム上は全国で対応可能になっているそうです。地域も一緒に取り組むことで、マクドナルドのような世界的な企業とも一緒に取り組める、その第一歩が亀岡だったことはうれしいですね。」
山内:「フランチャイズチェーン協会に足を運んで議論したということは、結構なインパクトでしたね」
今井:「いろいろな意見が飛び交う中で、協力的な声はあったのですか?」
山内:「潜在的には、理解してくれていらっしゃる方はいらっしゃいました。もちろん反対の要望書のようなものもコンビニや市内商業団体などからたくさんきました。期限を延ばせないか、とかね。でも原田さんたちが呼びかけてくれて、賛同する団体、予定通りやってくれという団体もかなり多く、その要望書も提出いただきました」
原田:「陰ながら応援はたくさんいただきましたが、賛同する要望書や意見がオフィシャルにはあまり届いてなかったので、みなさんに呼びかけました。すると、あっという間に、54団体も集まったんですよ。それにはびっくりしましたね。市民のみなさんも温度差はいろいろでしたが、積極的に賛成の人、こういう時代だから仕方ないよねっていう人、市民の皆様の意見は想像以上に前向きな印象でした」
木村:「良い意見も、反対の意見も集まるということは、関心の高さを表していますね」
大西:「主婦や子育て世代の方からは反対がありました。レジ袋をオムツ入れに使っているので、無くなったら困るんですと意見がたくさんありました」
原田:「レジ袋をオムツ入れとして使用することが禁止と勘違いされている人もいらっしゃいましたね」
大西:「いろいろな意見が交わされて、社会にインパクトを与えることができたおかけで、企業の方から一緒に活動をしたいというお声がけをたくさんいただきました。タイガー魔法瓶さんやソフトバンクさんなど多くの企業のみなさんと、色んな取り組みに広がっています」
山内:「ありがたい話です。企業と繋がれるチャンネルは今までなかったですからね」
今井:「きっかけが生まれたのですね」
山内:「はい。次なるターゲットはペットボトルの削減だということをビジョンとして打ち出しながら使い捨てプラスチック削減を進めてきました。そこで今日同席してくださっているタイガー魔法瓶の西さんとも繋がりましたね。自治体との連携は亀岡市が初めてですよね?」
西一仁さん(以下・西):「はい、亀岡市と共にタイガー魔法瓶が取り組んでいる“使用済みステンレスボトルの回収活動は、亀岡市が全国初の取り組みです」
山内:「世の中は、ペットボトルは使い捨てだと言っている中、ステンレスボトルをも更に使い捨てにしないという、タイガーさんのビジョンが、素晴らしいと思っています。市役所の設置しているステンレスボトル回収BOXはいっぱいになっています」
西:「亀岡市と共にタイガー魔法瓶が取り組んでいる“使用済みステンレスボトルの回収活動”が実現したのも、原田さん・山内さん・大西さん、亀岡市のみなさんがこれまでに積み重ねて来られた活動があってこそだという事を、今回のインタビューを通じて改めて感じました。
世の中を変えていく為にも“声を上げること・行動し続けること”この2つは欠かせないことです。私たち一人一人のコミュニケーションの5%が変わり始めれば、周囲に影響を与え始めると言われています。大きなムーブメントも、たった一人の想いが巻き起こした奇跡です。どんな小さな活動も、その人の想いや活動を知り、想いを馳せることは大きな力へと必ず変化していきます。この記事を読み“何かを始めたい”と少しでも感じたあなたへ。“あなたが叶えたい夢を言葉にし共感してくれる人と一緒に創造し続けてください”“あなた自身がその起点です”」
後編は「亀岡市レジ袋禁止条例までの道のり〜市民との対話について〜」をお届けます!
Comments