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執筆者の写真まこ

#サステナの目線 vol.7【ケイナンクリーン】国内で年間約10万トン捨てられる廃食用油でできた洗剤「GRIPON」の開発秘話

更新日:7月21日

企業のサステナブルな取り組みを紹介する本連載「#サステナの目線」のvol.08は、【ケイナンクリーン】です。ケイナンクリーン株式会社は、岐阜県で30年以上にわたり廃棄物処理やリサイクルに取り組んできた企業です。自社の収集運搬車などは早くからバイオディーゼル燃料を活用し、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を進めてきた実績をお持ちです。環境に関わる仕事をする会社だからこそ、廃棄物は余すことなく使いたいという思いから開発された植物系天然アルカリ洗剤「GRIPON(グリポン)」は、使用済みの食用油から作られています。前編では、植物系天然アルカリ洗剤「GURIPON」の開発ストーリー、後編では植物系天然アルカリ洗剤「GRIPON」の魅力についてお届けします。


2024年5月に開催された展示会「2024NEW環境展」に出展されたケイナンクリーンさんのブースへお邪魔し、ケイナンクリーン統括部長である近江隼さんにお話を伺いました。



すべてのはじまりは、地域貢献から

木村真悠子(以下:木村)「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。ケイナンクリーンさんとの出会いは、ハチドリーズさん主催のイベント会場でしたね。今日は植物系天然アルカリ洗剤「GRIPON」について詳しくお話しを伺えたらと思います。植物系天然アルカリ洗剤「GRIPON」は、バイオディーゼル燃料の生成過程で出てしまうグリセリン廃液で作られた洗剤だと聞いて、本当に驚きでしたし、感動しました。ケイナンクリーンさんが、「GRIPON」を開発するきっかけは、どんなことだったのでしょうか。」


近江隼(以下:近江)「ありがとうございます。ケイナンクリーンは1985年に創業し、今の社長が3代目です。現在、会長である2代目の頃から産業廃棄物処理業をスタートさせました。

植物系天然アルカリ洗剤「GRIPON」の開発の背景には、ケイナンクリーンが廃食用油の回収を始めたことがきっかけです。20数年前、本社と支社のある岐阜県恵那市と中津川市には、廃食用油の回収場所がなかったんです。当時、廃食用油を回収して欲しいと業者さんから依頼があり困っているならと、社長の近江則明が回収をはじめたことがきっかけなんです。当初はあくまで地域貢献の一環でした。」


木村「地域の課題が起点だったのですね。廃食用油の回収が主流ではなかったという背景がみえます。」


近江「そうです。廃食用油は回収よりも捨てることがメインだったと聞きました。現在は、廃食用油を回収する仕組みも作られていて、企業から出る廃食用油の90%以上がリサイクルされているそうです。」





木村「廃食用油の回収をはじめたケイナンクリーンさんが、どういった経緯で「GRIPON」の原料となるグリセリン廃液を出すバイオディーゼル燃料を作ることになったのでしょうか。」


近江「取り組みのきっかけは遡ること20年前になるのですが、環境問題へのアプローチとしてISO14001を取得し、CO2排出抑制に取り組みました。最初は電力の節約やアイドリングストップなどの活動を行いましたが、1%のCO2発生を抑制することがとても大変でした。その同時期に、食用油からバイオディーゼル燃料が作れるということを知り、以前から飲食店やスーパーから処理を委託されていた廃食用油が原料になるではないかと考えました。そこから、今まで焼却処分していた廃食用油をバイオディーゼル燃料に転換する取り組みに着手しました。廃食用油は家畜を太らせるためのカロリー源として飼料に添加されていましたが、排出量の少ない小規模の飲食店舗やスーパー、家庭などの油は回収されていなかったため廃棄物として処理されていました。」


木村「なるほど。ケイナンクリーンさんは、地域で集めた小ロットの廃食用油も有効活用するためにバイオディーゼル燃料を作ることを決めて開発されたんですね。」


近江「はい、廃食用油をリサイクルする方法として、バイオディーゼル燃料を作ることを選びました。これが15年前ですね。」


進化したディーゼル燃料「リーゼル(ReESEL)」


木村「御社の旧バイオディーゼル燃料と、10年前に完成した純度の高いバイオディーゼル燃料「リーゼル(ReESEL)」の違いについて教えていただけますか。」


近江「旧バイオディーゼル燃料(ディーゼルエンジン用の軽油代替燃料)は、このような茶色(※写真参照)のものが主流でした。これは、エステル交換反応のみで製造した純度96%の燃料で、4%不純物(未反応の食用油)が残っていました。「リーゼル(ReESEL)」は、従来のエステル交換反応処理に蒸留、静電浄油工程を加えて精製した純度99.9%の高純度バイオディーゼル燃料です。(残り0.1%は腐食防止剤です。)特殊な改造等必要なく、軽油を使用するすべてのディーゼルエンジンにそのままご使用いただけます。さらに、CO2がゼロカウントになるので脱炭素の活動に大幅に貢献し、軽油と比べ黒煙は3分の1以下、SOx(ソックス)(※注)はほとんど含まないクリーンな燃料です。旧バイオディーゼルでも不純物による燃料フィルターの目詰まりは起こしたことはありません。」


木村「「リーゼルReESEL」の原料が植物由来だから、二酸化炭素排出量がゼロカウントになるのですね!素晴らしい燃料ですね」


近江則明社長もリーゼルについて詳しく教えてくださいました。

バイオディーゼルの可能性を諦めなかった2人

近江「専門的な話になるのですが、燃料フィルターの目詰まりの原因は、極度の低温状態(外気が―5度以下)の時に燃料フィルターを通過する際、流速が上がり液温が低下し、液温が流動点限界を超えたときに固体化する。これにより燃料フィルターの目詰まりが起こります。現在、高純度「リーゼル(ReESEL)」燃料でも同じ現象が起こりますが、流動点降下剤の添加によりこの現象を防いでいます。」


木村「なるほど。バイオディーゼル自体が原因にはならず、使用される環境に左右されるのですね」


近江「はい。社長の近江則明とイーレップ株式会社の薮内利和さんが、バイオディーゼルに可能性を感じてコスト度外視で研究を続けていました。そして10年前に純度の高いバイオディーゼル燃料「リーゼル(ReESEL)」の開発に成功しました。独自の製法により従来のバイオディーゼル燃料で生じていた問題を高い次元でクリアした国内最高品質です。」


木村「素晴らしいですね。社長の近江則明さんと薮内利和さんの諦めない気持ちが実を結んだのですね。」


近江「はい。「リーゼル(ReESEL)」を分析してみると、軽油よりも綺麗で洗浄効果もあるんですよ。トラックで使用してみると、タンクも配管も綺麗になりました。」


木村「植物由来の再生可能エネルギーでありながら、持続可能な循環型社会の構築と、さらに地産地消の地域エネルギーの活用にも繋がりますね!そして、その先に「GRIPON」の原料になるグリセリン廃液に着目されたんですね。」


近江「そうですね。今は「リーゼル(ReESEL)」と「GRIPON」の啓蒙活動のために、一般社団法人リーゼル協会と合同で展示会などに出展しています。」


木村「とても興味深いお話が聞けました。後編では、「GRIPON」の魅力についてたっぷりお話を伺います!近江さん、引き続き、よろしくお願いします!」


近江「こちらこそ、引き続きお願いします!」


今回お話ししてくださった、ケイナンクリーン株式会社統括部長の近江隼さん

※SOx(ソックス)とは、硫黄(Sulfur)酸化物(Oxide(s))の頭文字をとったもので、一酸化硫黄(SO)・二酸化硫黄(SO2)など硫黄酸化物の総称。



 

文:木村真悠子


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