今回は、新越ワークスの山後隼人(さんご はやと)さんをゲストにお迎えして、新越ワークスのものづくりや燕産で完成した話題の日本酒「ハレトケ」、地域の魅力についてお話していきます。
「酒器」で感じる日本の春夏秋冬
今井みさこ(以下・み)「去年8月に公開した「おうちごはん」をより豊かにしてくれる「まどろむ酒器」に続き、二回目のインタビューになります。まずは、山後さん自己紹介をよろしくお願いします」
山後隼人(以下・山)「改めまして、株式会社新越ワークスの山後隼人です。新潟県燕市というところで、厨房用品や糧用調理道具、キャンプ用品などの製造を行う会社で働いております。私は調理道具やテーブルウェアを製造販売する、スリースノー事業部という部署で商品の開発から販売までを担当しています」
み「前回のインタビューから1年以上経ちましたね。その間に世間ではサステイナブルへの興味関心が高まったと感じています。隼人さんはそのように感じていますか?」
山「そうですね。1年前はサステナブルやSDGsをニュースなどのタイトルでよく聞くようになったなと思ったタイミングだったと思います。そこから1年が経つと、タイトルよりも身近なスタンダードになったというか、当たり前になったと感じますね。商品開発をしているので、SDGsの意識というよりも、内実になってきていると仕事の中で特に強く感じます。捉え方も変わってきているんだと思います」
み「山後さんとはわたしがサステナブルの発信をはじめた頃に出会ったんですよね。わたしもこの1年でイリノイ大学、エラスムス・ロッテルダム大学、イェール大学の心理学など学問としてサステナブルやSDGsのことを知識としてたくさん学んで、捉え方が増えたと感じているんです」
山「僕のように新潟で暮らしている人間と、海外で暮らしながら学問で理解して落とし込んでるみさこさんとは見方が違うと思うので、二つが合わさるといろんな発見がありそうですよね」
み「そうだと思います。わたしが今住んでいるシリコンバレーという土地柄も独特だと思います。歴史はそこまでないけど、経済的発展を続けているエリアなんですよね。だからこそ、この前山後さんが話していた燕で暮らし仕事をしていることは、燕というドラマの一部なんだという話も非常に興味深いです。前回は前編、後編にわたって、銅と錫でできた「まどろむ酒器」についてお話を伺いました。まどろむ酒器について改めて説明してもらえますか?」
山「はい、こちらは銅と錫という金属でできた縦長型の酒器です。金属酒器の表面には、絵柄が転写されており、この絵柄は16-17℃以下の温度に反応して色づく仕掛けになっています。そのため、常温の室内で冷たいお酒を注ぐと表面の絵柄がふわーっと色づきます。絵柄のバリエーションには、現在、桜、花火、紅葉、紫陽花の4種がラインナップされていて、じんわりと冷たいお酒、水を注ぐと変わっていく様がまるで花が咲いていくように見えるところが魅力ですね。日本人はとても日本的な美的感覚を持っているんですよね。そんな視点からも美しい訴える要素を持っています」
み「まどろむ酒器は本当に美しいんですよ。わたしも花火を愛用させてもらっているんですけど、ゆっくり色づくところが日本っぽい。心があたたまるんですよ。まどろむ酒器はインバウンド向けを想定して作られたんですよね?」
山「そうです。まどろむ酒器が生み出されたのが2020年の初めだったので、ちょうど日本でコロナ感染者が出たくらいのタイミングだったんです。当時は、オリンピックのタイミングで、日本を訪れる外国人の方に、日本の文化に触れてもらえる機会を作れるいい商品だと思っていました。しかし、世の中が大きく動いて、これはインバウンド向けと限定せずに日本向けにシフトをしました。
日本酒には春、夏、秋、冬と各季節で特徴的なラベルやボトル、お酒が展開されるのに対して、酒器も季節感が出せたらいいなと思いながら作っています。日本の四季を表現する絵柄シリーズですが、デザインがなかったのですが、まもなく冬バージョンの雪椿がリリースされるのです」
み「雪椿は、椿とは違うのですか?」
山「厳密にいうと違うんですよ。雪椿は主に日本海側の豪雪地帯、寒冷な地域に咲く花で、雪が降る景色の中によく見かける花です。特に雪の色とのコントラストが美しく、寒冷な気候でも咲く雪椿は、実は新潟県の木として指定されているんです。新潟の豪雪に耐えて越冬し、たくましく生命力と美しい花を咲かせる姿から、新潟県の県民性を象徴していると言われています。シリーズ最後のデザインとしての雪椿は、新潟のストーリーをたくさんに詰め込んだ、想いをこめたバージョンになりそうです」
み「桜、花火、紫陽花、紅葉、雪椿、続々とシリーズが発表されているんですね。シリコンバレーは日本ほど季節がないので、まどろむ酒器を使うと、とてもエモい気持ちになるんです(笑)。雪椿の完成が楽しみです。そして、前回の話の中で、新越ワークスさんが掲げている「道具を含めて文化である」というコンセプトがとても印象的でした。後編の記事では、燕市の歴史そのものが、ドラマだとお話しもされていましたよね!その後に、燕市の日本酒を作ったというニュースを聞き、新たな章がスタートしたんだ!と思っていました。燕市の日本酒「ハレトケ」について、教えてください」
燕の食文化に新たな1ページをくわえる取り組み
山「日本酒づくりのきっかけは「新潟プレミアムダイニング」という、地域の食材・シェフが一夜限りのスペシャル・ディナーをつくり上げるイベントです。地元の農家さん、飲食店さん、調理器具を作るメーカーはじめ、燕を拠点に全国レベルで活躍するプレイヤーの皆さんと作り上げたチームが運営、開催するイベントで、昨年末で2回目を迎えました。酒蔵数日本一の新潟県なのですが、実は燕市には酒蔵がないため、地域の食を表現する時に唯一といってもいいほど、燕産のお酒がない事が心残りだったのです。
そこを強く感じていらっしゃった創業130年になる燕市の酒屋さんの想いからスタートし、燕市で800年続く農家さんが酒米の栽培をスタートさせたんです。燕の食文化に新たな1ページを加えるこの試みには、農・商・工が一蓮托生となってチームを構成していて弊社も参画しています。スリースノー事業部からは「まどろむ酒器」を、クラウドファンディングの返礼品として提供しました。日本酒、その名は「ハレトケ」です。日本語としての「ハレとケ」の意味と、「晴れ晴れ」の意味をかけています。「ハレの日(おめでたい日)もケの日(日常の普通の日)も、ケカレの日(元気が枯れた日)も、もの作りの町で働く皆さんに、ハレバレと楽しんでもらえるよう造った燕の純米酒」であり、方言である「晴れとけや!」「はれとけいや!」などの晴れて欲しい!という意味と、どんな日も晴れやかな気持ちでいて欲しい!という願いを込めています」
み「素晴らしいですね。800年も続くお米農家さんがチームの一員というところに、文化の継承=サステナブルだと感じます。みなさんの中には、サステナブルと聞くと、ペットボトルやビニール袋の削減など、地球環境の問題だったり、リサイクルやエコと言った言葉を連想する人も多いのではないかと思います。実は、文化の継承もサステナブルなアクションの一つになるのです。サステナブルの領域は実はとても広いんですよ。みなさんの周りにも、創業100年とか、5代続くなど耳にすることありますよね!日本は歴史も長いので、たくさんのサステナブルがあるんです。話を戻します!日本酒「ハレトケ」のチームメンバーはどのように構成されているのですか?今後の展開などもあれば教えてください」
業種を超えて人がつながり循環する新潟県燕市の魅力
山「ツバメクロスアクションズというチームです。先ほどお話したプレミアムダイニングもこのメンバーが主幹です。構成メンバーは地元の農家さん、飲食店さん、我々のような調理器具メーカー、そのほか「食」に関連するプロフェッショナルの方々で構成されています。燕は「食の職人」がたくさんいる地域なので、様々な活動を通じて燕の⾷⽂化の過去と現在をつなぎ、新しい未来を築いていく、燕という地域を舞台に新しい「食文化都市」を築くことを目標としています。
ツバメクロスアクションズのACTIONSは
A…Agriculture(農業)
C…Cooking(料理) T…Tradition(伝統)
I…Industry(⼯業) O…Originality(独⾃性、創造⼒) N…Navigation(案内)
S…Sightseeing(観光)
の頭文字をとっています。僕らは食の分野からこの地の可能性を発信し、発展させようとしています。自分の生業もありながら、業種を超えたところで個人、企業、団体がクロスし合い、この地の新しい価値を生むことを目指しています」
み「お話を伺っていると、燕市は組織単位ではなく、横のつながりもすごく大切にされていると感じます。そういった習慣は元からあったのですか?」
山「ツバメクロスアクションズの動きがまさにそうですね。まちとして次の世代を育成していこうとする文化というかDNAがあるように感じています。そもそも一人や、一つの企業だけではできないことが多いことをみんなが自覚しているんだと思います。世界から見れば小さい町だったり小さい工場ですが、世界と戦っていくためには、それぞれの知恵、資源、技術、人、いろいろなものを出し合い、共創していくことが今もなお必要だと感じています。
いろいろな人と交流する中で、会社外にも尊敬できる先輩はたくさんいらっしゃるし、とても刺激を受けています。相談もするし、相談を受けることもありますね。この地の人たちのことは基本的に「仲間」だと思っています。燕出身の人もそうでない人も。ここに居る人たち=仲間とともにある意識は、燕の物語を次に繋いでいくという思想だと感じます。どうしたらよりベストに近づくのか、どうしたらもっと面白くなるのか、どうしたら次の世代につなげるのか。それを本気で考えているんです。前回も触れましたが、バトンはここで終わらず、次に繋ぐことが前提です。先輩方がつないできてくれたからこそ、受ける恩恵がたくさんあるんです。一代では決して築き上げることができない、理にかなった恩恵だと思っています。「pay it forward」という概念がありますが、次の世代に今度は私たちがそれを与えるようになる。そうやってこの地で人と歴史が循環して発展していくものだと認識しています。日本酒「ハレトケ」という一つのお酒、食文化の一つのピースが地域の中で共有されて継承されていくと、それをきっかけに、人がつながり、循環していく。こういったつながりが、燕の明日を創る基盤になっていくと個人的に強く想っています」
み「とても素敵ですね!「食文化の一つのピースが地域の中で共有されて継承されていく」というフレーズ、とても心に響きます。どこか日本人の精神性にも通じるなと感じました。そういった観点で見ると、まどろむ酒器にも同様に感じるものがありますね」
山「はい、そうなのです。先ほども触れていただきましたが、僕たちは社会的に価値のあるものをつくっていきたいと思っています。会社の考えのひとつに「道具を含めて文化だ」というがあります。食文化であれば、酒器であったり、ワイングラス、器など、その形であることに長い歴史と意味、人の想いがありますよね。酒器が海外の人の手に渡ったときに、その精神や文化に触れてほしいと思っています。まさに、まどろむ酒器は「卓上でお酒を酌み交わす」という日本酒独特の所作、日本人の「繋がり」を大切にする精神性に着目して作っています。テーブル上で注ぎ合うと、表面の柄が変わっていく様がよく見えますよね。柄の変化をより楽しむために、自然と「注ぎ合う」という体験がしたくなる。そんな風に、道具を通してその人の視野が広がり、より豊かになっていく、そんなきっかけになりたいと思っています」
み「ありがとうございます!素敵な燕の歴史を紡ぐドラマの1話を観た気分になりました!!そして、みなさんに嬉しいお知らせです!今、山後さんからお話しいただいたまどろむ酒器が2月の#サステナ部のプレゼントになります!!パチパチ!!素晴らしい商品を手にとって欲しいと思っているので、みなさん、ご参加お待ちしております。
#サステナ部 ご参加の方法は
@misamisazをフォロー&投稿をリツイート!してね。
山後さん、本日はありがとうございました。このインタビューをきっかけに新越ワークスさんとまた、燕市さんと一緒にサステナビリティに関する企画もやっていけたらと思っております。本日は、どうもありがとうございました!またぜひご一緒させてください」
山「こちらこそ、ありがとうございました!楽しい時間でした。#サステナ部 を通じて、まどろむ酒器を知ってもらえることを嬉しく思っています。」
「まどろむ酒器」「ハレトケ」についてもっと知りたい方はこちら
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